捏造しまくり
 
 
 
髪の毛を束ねてコートを着る。装飾のついた銃を手に持つと重さと冷たい感触が伝わってきた
銃をしまい手袋をし、帽子をかぶるとナイトレイの若様がお出ましですね、とブレイクが飄々と笑った
10年という歳月は辟易するにはあまりに長すぎた。
時間は癒す事もなく、悲しみも思い出も色濃くなっていくばかりで、大気に充満する、飽和状態。
息苦しさすら心地良い。覚えた煙草の煙が入り雑じる。
雑踏の中で雑音、雑念が足音をたてている、自分の足は地についていないのに。

「いくつでしたか?」
深夜、仕事を終えてパンドラ本部に帰ると人気のない客間に一人ブレイクがソファーに座っていた。
部屋に入る俺を確認すると、立ち上がってうやうやしく礼をして、
お疲れ様です、若様。にっこりと相変わらず嘘くさい笑顔を浮かべながらそう言う。
俺はねぎらいの言葉に対しては応えずに静かに先ほどの問いに対して「3人」と呟いた。
それは家の仕事として今夜殺した人間の数だった。
「あなたの恋人は酷い人ですねえ。こんな仕事をあなたにさせることになって」
「俺が勝手にやっていることだ」
帽子とコートを脱いで、ソファーに身を沈める。知らず知らずのうちに疲労が溜まっていたのか、
自然と瞼が下がってくる。
「ああ、そんな所で寝ないで下さいよ。風邪でもひかれたら私が怒られるじゃないですか」
ブレイクはそう言いながら隣に座る。コーヒーを勧められたが、黙って首を振った。
「オズ=ベザリウスがこのまま帰ってこなかったらあなたはどうするんですか?
いよいよナイトレイ家の後でも継ぐんですか?」
「さあな」
「…ああ、そういえば死んだことにしたんでしたっけ。君の中で。」
数年前のあの夜の日に主人は彼岸に消えたままで、代替すら見つからなかった。
望みむことが苦痛となる頃に、生存確認がとれないままならいっそ殺してしまえと思った。
思い出という記憶で、時効いう言葉で。追悼の黒は皮肉にもしっくりと馴染み、
まるで銃の重さに痺れていくかのように、ゆっくりと麻痺しながら世界から隔絶されいくような気がした。
「どんな気持ちですか?」
「…現実は変わらないのに、まるで地に足がついていない。亡霊として生きているみたいだ。」
亡霊、という単語にひっかかるものがあったのか、ブレイクは眉をひそめた
「そのうち慣れるものですよ」
「打算的だと思うか?オズを助けるためにここまできたのに、期待するのが辛いからといって
最終的に投げる俺を臆病で根性なしだと、」
「いいんじゃないですか。あなたがどう捉えようが現実は現実のままだし、オズ君は帰ってこない。
>不毛な後悔に疲れることもない。それにベザリウス家に対する裏切りも、ナイトレイ家での君も、
君が言う浅はかさも知られずに済んで」
それとも卑劣漢とでも罵って欲しいんですか?
ブレイクは笑う。俺は何も言わない。
「ま、慰め方なら知っていますけどね」
そう言って、ブレイクは唇を重ねる。
生暖かい舌が口内を這う感触に顔をしかめる、くぐもった声と掠れた息づかいだけが部屋を支配する。
「…へたくそ」
「それはオズ君と比較して?それとも仕事の相手と?」
「後者だ」と言うとブレイクはシニカルに笑う。 >張り付いた笑顔の割にいろんな種類の笑い方を知っている男だな、と思った
「君はよくやってますよ。君自身はどうだか知らないけれど、私はあなたを認めてあげますよ。
>許されるかどうかは置いといて、ね」
「ブレイク」
「何ですか」
「…お前は、それを誰に言ってるんだ?」
一瞬、部屋が鎮まりかえる。世界の時が止まったかのような錯覚、まるで100年の時が過ぎたような。
「…もちろん、あなたですよ。ギルバート・ナイトレイ」
今夜はずいぶんお喋りですね、とブレイクはもう一度俺の唇をふさいだ。

膠着期間。ギルはちょっと慰めてもらいたいけどブレイクさんはこの時期のギルに過去の自身を投影しまくっているのでなかなかうまくいかない
 
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