メデュシュタ

 

 

刃を突き立てた、最後の瞬間の君の恍惚とした表情が今も脳裏に焼き付いている
(それは凄く大きな変化)


「自分の事が嫌いなくせに」
小さな体がのし掛かってくる。カーテンの間から漏れた光を浴びて黄金色に輝いた、長い髪の毛をその身に浴びる。
「それでいて他人を好きになるの?笑っちゃうわ。」
本来の姿とは随分かけ離れたその幼い体躯に似つかわしくないすらりと伸びた白い腕が持ち上がり、そのまま指先が頬に触れる。彼女が愛おしそうになぞる、誰も彼もが目を背ける自分の顔。繋ぎ目だらけの素材と素材がぶつかり合う、先輩が言うには奇妙な感覚を彼女も感じているのだろうか。
「知ってるよ。だから俺は君を好きはならない」
彼女はその言葉に顔をしかめた。
「そうね、あなたは誰かを好きになる権利はないの」
今度は俺は顔をしかめ、彼女は嬉しそうに笑った。傷付け合う会話が後々よくない事に繋がる事を知っている。だけど止める気はないのだ。お互いに似すぎているから。狂気、いや愛情が。
「…俺に切られた時どう思った?」
「最悪よ」
「そう?俺は羨ましいと思ったよ。俺も先輩に切られてみたいと思っているから」
「なあに、それ。死にたいなら勝手に死ねばいいじゃない。」
「違う。先輩に切られたいんだよ」
「そう言って、誰かのせいにしたいだけでしょう?あなたのそういう不甲斐ない所が大嫌い」
「俺は君のこと嫌いじゃないよ」
俺はそう言って彼女の頬に手を差し出す。幼い子供のそれの、柔らかな感覚。彼女はくすぐったそうに目を細める。
「……嘘つき」
「君こそ」




お互い微笑み合う真昼、赤いネイル!…だって真実などに興味はない
東京事変/遭難
 
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